2011年06月

2011年06月26日

読書録 「人間はどこまで耐えられるのか」 フランシス アッシュクロフト を読む2

第4章 どのくらいの寒さにたえられるのか より

寒さと戦う

「人間は防寒具にしっかりくるまり、
十分に栄養を取って、寒さをしのげる
場所にいれば、かなりの寒さにも耐えられる。

戦争となると、かなり事情が変わる。
寒さは軍事作戦に破滅をもたらすことも
あり、それが歴史を作ってきた。
紀元前218年に、カルタゴのハンニバル
将軍は9万人の歩兵と1万2000人の騎兵隊
そして40頭の軍事用のゾウを率いて冬の
アルプスを越えたが、イタリア北部にたどり着いたのは
半分だった。残りは厳しい寒さに耐え切れず
道中で息絶えたのだ。
1812年にはナポレオン一世が50万の大群を率いて
モスクワに進軍した。
村は撤退するロシア軍によって略奪された後で、
膨大な人数の侵略者は十分な補給ができず
多くの兵士が飢え死にした。
冬が到来し、悲劇的な結末をもたらした。気温は
氷点下40度まで下がり、・・・
生きてフランスに帰国できた兵士は二万人に満たなかったと
いう。
ヒトラーはナポレオンの教訓に学ばす、第二次世界大戦中に
ロシアの冬で多くの兵士を失った。

人間は十分に食べなければ体温を維持するだけの
熱を生成できず、厳しい寒さでは、体が必要とする
熱量は一気に増える。」

「冷気で肌が凍るの防ぐためには、暖かい血液を大量に
循環させなければならないが、これは体に大きな負担が
かかる。血液が肌の表面近くを流れると、より多くの熱が
体外に奪われ、体全体が冷えるからだ。
そこで、体から熱を放出しない代わりに、外側の組織が凍る。
手、足、鼻、耳などは容積に対して表面積が広いため、
とくに多くの熱が放出されるから気温が大幅に下がったときは
これらの部分を犠牲にして凍らせ、その分の熱量で中枢温度を
維持するのだ。」

「寒いところでは、体内で生成される尿の量が増える。
尿の量は体内を循環する体液の量に関係があり、
体液が増えると重さを感じた受容体が尿の生成を
促す。また、体の表面の毛細血管が寒さで収縮するため
循環器系の容積が減って血圧が高くなる。
気温がかなり低いと腎臓が濃度の高い尿を生成する
能力も弱まって、尿に含まれる水分が多くなる。」

「赤ちゃんは大人に比べて、体の大きさに対して表面積が
かなり広いので、熱がより速く奪われる。赤ちゃんは寒さに
とても敏感だか、寒くても体は震えず、代わりに特別の熱生成
システムが稼動する。赤ちゃんの背中から上のほうにかけてと、
腎臓のまわりには、脂肪の塊があり、その量は体重全体の4%
にも及ぶ。これは褐色脂肪と呼ばれ、普通の白い脂肪とは働きが
異なる。
白い脂肪組織はいわば断熱毛布だが、褐色脂肪はむしろ
電気毛布である。ミトコンドリアという細胞小器官が脂肪組織に
たくさんふくまれている。」


dragonfruit123 at 16:31|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 読書録 

読書録 「人間はどこまで耐えられるのか」 フランシス アッシュクロフトを読む1

極限の環境における
人間の生理学的な反応を説明しながら
人間が生き延びる限界を探る
内容。内容は盛りだくさんなので
自分の印象に残った所を抜粋。


第3章 どのくらいの暑さに耐えられるのか

アフリカ人は手足が長い

「体の大きさは体温調節とって
重要な意味がある。

体の大きな動物は、小さな動物より
肌から熱を放出する量が
相対的に少ない。トガリネズミやハチドリ
など小型の動物は肌から急速に熱が
奪われ夜間に体温が維持できないほどだ。

反対に、大型の動物は暑い中で運動すると
体が熱くなりすぎる危険がある。
アフリカの草原で繰り広げられる動物の
レースが短距離走なのも当然だろう。」

「人間の体の大きさは気温と相関関係があり、
それによって異なる人種が進化してきた。・・・
寒冷地で進化した人々は、背が低くてずんぐりと
しており、手足も指も短い。
体の大きさに対して表面製を小さくし、
熱を保持しているのだ。
一方赤道直下のアフリカの平原などで
進化した人種は、背が高くて手足は長い。

砂漠では、年間を通じて食糧が乏しいので、
人間も動物も、食べ物が豊富にある時に
脂肪を体内に蓄積する。
ただし、皮下脂肪として分散されると強力な
絶縁体となって熱の放出を妨げることになる。
そこで砂漠の住人は、体内の脂肪を一ヶ所に
まとめて貯蔵する。

典型的なのはラクダのこぶ。
南アフリカに住むコイ族は体内の
脂肪をお尻にため、細長い手足が
効率よく熱を放出する。」

熱中症
「体内の温度調節システムが正常に
機能しなくなり、中枢温度が41度を超えると
熱中症を起す。
最初の警告は顔が紅潮し、肌が熱くなって乾くことだ。
頭痛やめまいがして体力が奪われいらいらしてくる。
やがて意識が朦朧とし、体の動きがぎくしゃくする。
体温が上昇しているにもかかわらず汗をかかないので
体温はさらに上がる。42度を超えると命が危ない。

すみやかな治療が必要だ。治療が遅れると体温の上昇によって
脳がダメージを受け、その後に治療しても死亡率は30%を超える。
患者の体を冷やす最も効果的な方法は、生ぬるい水に浸した
スポンジで全身を拭うことだ。この方法は冷水に体を沈めるより
水分の気化熱によってはるかに効果的に体温をさげることができる。
冷水に入れると全身の血管が収縮するため、血液の流れが肌に
とどかなくなり、熱の放出が減ってしまう。
週上の場合は、首やわきの下、脚の付け根など、
太い血管が肌の表面近くを流れるところにアイスパックを
当てる。」



dragonfruit123 at 15:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 読書録 

2011年06月23日

読書録 「自閉症」幼児編 平岩 幹男を読む5

自閉症と診断されたらどうするか。

自閉症の特性は生涯続く。
社会でくらすことは可能か。
全ての子どもが普通に
社会にくらすことが可能ではない。

知的障害のない高機能自閉症の場合、
適切な周囲の理解とサポートがあれば
暮らしていける。
しかし、2から4歳で言葉のないまま自閉症と
診断された場合、何の療育もしないまま
大人になったときに普通に社会生活を送ることは
難しい。

自閉症児が周囲のサポートを得るためには、
「自分が今何をしたいか、どんなサポートを
欲しているか」を相手に伝えなければならない。

自閉症の特性は障害変わらないという認識に
たって周囲のサポートを得るのに必要な
最低限のコミュニケーション能力の獲得を
目指す必要がある。

具体的には、他人にあいさつする、指示に従って
行動する、しなければいけないこと、してはいけないこと
を理解する、自分の考えを言うなど。

療育について

集団の場面ではTEACCHが取り入れられてきた。
個別の療育ではABA。

その他の療育
HAC(Home program for austic children) 聴覚課題から行動課題へと
                           ステップを分けてコミュニケーション能力の
                           獲得を目指す。(独協大学 海野先生)

RDI(Relationship Development Intervention) 対人関係や社会性、変化への対応力を伸ばす。
                             名古屋大学 白木先生
SST(Social Skill Training)            言語獲得の後、望ましい行動を強化、望ましく
                             ない行動を消去する。

幼児の各ステージでの訓練として、著者はABAを勧めている。




dragonfruit123 at 21:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 読書録 

2011年06月22日

読書録 「自閉症」 幼児編 平岩 幹男 を読む4

知能検査と発達検査

発達検査は知能検査ににているが実際には異なる。
発達途中の幼児の知能を通常の知能検査でしらべることが
難しいので、異なる方法で発達の程度をしらべたのが
「発達検査」。

●遠城寺式幼児分析的発達検査法
(九州大学の故遠城寺宗徳先生たちによって開発された)
●デンバーII式発達判定法
(アメリカの検査法を日本語に直したもの)
●新版K式発達検査2001
(京都市で開発され、頭文字にKがついている)
●田中ビネー検査
(ビネーの検査を田中寛一先生、田中研究所が工夫)

デンバーII式発達判定法:「異常の疑い」「異常なし」を分けるのみ。
ほかは発達年齢を算出。
100は標準値。
発達のスクリーニング検査で多く使用されているのは、
遠城寺式と新版K式。最近では新版K式の採用が多い。

新版K式内容
・姿勢運動領域(3歳半までの運動発達に関する観察項目)
・認知・適応領域(目で見て手でする課題を多く含む)
・言語・社会領域(聞いて言葉であるいは指差しで答える課題を多く含む)

原因にかかわらず、言語能力(自発語及び理解)と
日常生活能力が低ければ低い発達指数になる。

発達検査で算出される指数は、しばしは知能指数と
混同されるケースが多い。

成人の知能指数は標準を100、標準偏差を15と
なるように設計されている。

標準偏差が15となっているので狭い意味での正常知能は
85~115
広い意味での正常知能は70~130

70以下の人は約2%
130以上の人は約2%くらい存在する正規分布をしている。

子どもの場合には年齢とともに知能が発達することから
比較できるのは同じ年齢の子どもたちの集団だけ。
年齢が上がれば、検査をやりなおさなければならない。
発達指数は恒常的なものではなく、年齢によって変動する。







dragonfruit123 at 23:22|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 読書録 

読書録 「自閉症」 幼児期編 平岩幹夫著を読む3

自閉症の幼児期からの発達段階にそった
特徴について、具体的にしるされていてとても
分かりやすい本。



乳幼児検診でどこまでわかる?

1歳6ヶ月検診
 ・法定検診 8割が自発言語として単語を5語以上話せるようになる。
  非言語的コミュニケーションの障害を発見するのは困難。

3歳児検診
 ・法定検診 「ジュースが飲みたい」などの2語文が話せるようになる。
  非言語的コミュニケーションの障害も発見しやすくなる。
5歳児検診
 ・法定検診ではなく導入しているのは一部の自治体。
  高機能自閉症やADHDなどの発達障害を発見するのが目的。
  しかし、現実には困難も。
就学前検診
 ・小学校入学前に通常学級に就学できるかどうかを確認するため
 に行われる。特別支援学校、学級への就学を勧められることがある。



dragonfruit123 at 20:55|PermalinkComments(0)TrackBack(0) 読書録